
役へのアプローチ(やくへのあぷろおち)
まずは3月1日(金)〜3日(日)まで行われた、
江戸村公演『海に鳴る想い』にご来場頂いた方々、誠にありがとうございました。
今回のお芝居は、現在ゲスト出演中の高橋茂紀さん(下町かぶき組)による新作書き下ろし台本。
僕が頂いた役・お夢。
父親を捜し続け20年振りに再会するも、記憶をなくした父。そんな父親の記憶を呼び起こすために昔話をし始めるというところから物語は始まる。
お夢という女性がどう映ったかは分かりませんが、彼女の父親に対する愛情や、彼女の魅力が少しでも伝わっていれば幸いです。
さて、話は変わって・・・。
よく「役へのアプローチはどうすればいいんですか」という質問をされることがある。
いわゆる役作りというやつ。
でもそれは100人の役者がいれば100通りのやり方があると思うし、アプローチのやり方に間違いはあっても正解はないと思うんです。
それに人によって合うやり方、合わないやり方ももあるだろうし、「これだ!」と断定するのはできないと思うんです。
だから、いつもこの類いの質問を受けた時は「どうするんですかねえ」といってはぐらかすのだけれど、
僕もこの年になって尊敬されたいという欲が出てきたので、
(おっと心の声が漏れてしまった)
今日は一つ紹介しようかなと思います。
ただ先に断っておきますが、今から紹介するものはあくまでも「アプローチ」の一つに過ぎないし、「アプローチ」であって「ゴール」ではないということ。
その役に近づくため、もしくは近づかせるための「手段」の一つにしかすぎないことを先に書いておきます。
またさっきも書いたように百人百様のやり方があるわけで、もちろん合う、合わないもあると思います。だからこんな方法もあるんだよという参考までに聞いておいてください。
最期に、ここまで前置き長く書くと、さぞ凄いメソッドが出てくるんだろうと期待されるかもしれないけど、決してそんなことはありません。
ただ、こうしてちゃんと前置きを書いておかないと、後で芝居を少しかじっただけで分かった気になった、知識だけ詰め込んだ「自称・評論家」どもに色々と言われそうなので、こうして先に断りを書いておきました。
(おっと心の声が漏れてしまった)
むしろこれから紹介するものは演技を始めたばかりの方に特にオススメする方法ですので、参考になれば幸いです。
さて本題!
役へのアプローチ、それは「モノマネ」をすることです。
これだけでは伝わりにくいと思うので、少し順序立てて説明します。
① 台本を読む。
まずあなたが頂いた台本を丁寧に読んで、そこで自分が頂いた役のイメージをします。
(どんな性格、どんな声、どんな容姿、などなど)
② キャスティングする。←1 番大事
そしたら次にキャスティングをします。
キャスティングとは配役を決めるということ。
まるで自分が映画監督やプロデューサーになった気分で、自分の演じる役を、誰が演じたらピッタリ当てはまる(相応しい)かを考えます。
それはドラマや映画で活躍している役者さんでもいいですし、近所のおばちゃんでも、高校の同級生でも、いつも電車で一緒になるおっちゃんでも、誰でもいいです。
とにかくあなたの知っている人で、一番誰がその役のイメージに近いかを考えます。
③ モノマネする。
そしたら後はもう簡単。
そのキャスティングした人のモノマネをしながら、台詞を言ってみましょう。それだけで勝手にその役に近づいているはず。
今回僕が『海に鳴る想い』演じていた役・お夢を例にして考えると、
まず僕が台本を読んでみて、「お夢」という役は浜辺美波さんみたいだなと思ったとします。
(例えばの話ね)
それも『ゴジラ-1.0』に出演していた時の、浜辺美波さん(大石典子役)みたいだなと思ったとします。
(このように役者さんでイメージするなら、この作品の時のこの人って考えた方がより良いと思います)
こうしてキャスティングができたら、あとは自分の役の台詞を見て、大石典子(=浜辺美波)をモノマネをしながら台詞を言うだけでいいのです。
そうすると、あなたがモノマネの天才でない限り、そのモノマネは浜辺美波にはならないけど、そのモノマネはあなたがイメージしたキャラクターに少なからず近づいているはずです。
表現が正しいか分からないけど、理屈としては、
福山雅治さんのモノマネをするんじゃなくて、福山さんのモノマネをする人のモノマネをする感じ。それなら簡単に出来るし、結果、福山さんにも似てくるっていう。
あとここで大事なことは、キャスティングを間違えないこと。
このアプローチは、自分がキャスティングした人をモノマネしているのであって、そもそもキャスティング自体が、本来演じるべき役のキャラクターとかけ離れていると、全然違う方向に進むことになってしまうので、台本を丁寧に読んでピッタリな人をキャスティングすることが一番大事だと思います。
それが出来れば、役へのイメージは掴みやすくなると思うし、それだけで簡単に近づくことが出来ると思うので、初めての方とかにはオススメします。
最期に重ねて言いますが、
これはあくまでも「アプローチ」の一つ。
詳しくは書かないけど、このやり方ばかりに頼ってしまうと、それは演じているんじゃなくてただモノマネをしているだけになってしまいます。
あくまでも一つの手段やキッカケとして、こういう方法もあるんだなくらいにということ留めておいて下さい。
実はここだけの話、
今回お夢という役を浜辺美波さんを意識していた箇所がありまして、ちゃんと表現できているたのかどうか、終演後に高橋さんに確認しに行った。
何を隠そう、高橋さんは大の浜辺ファンなのです。
福「〇〇の〇〇の部分、浜辺美波さんを意識してやったんですけど、どうでしたかね?」
高「微塵も感じなかったです」
うん、まだまだだな。
じゃあ、またね。
2024.03.05 筆記